アンニョンハセヨ、副編です。
「韓国新人劇作家シリーズ」の第7弾公演が先日、東京の劇場にて7月13日(木)〜17日(月)まで開催されていました。
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「韓国新人劇作家シリーズ」とは、韓国の新人作家の登竜門「新春文芸※」受賞作品を翻訳・上演するもので、2012年にスタートし、今回、第7回目を迎えました。
作品上演、トークセッション、レクチャーなどを通して、日韓の演劇交流を図り、現代社会の抱える問題を共有し相互理解を深めること、未来を考える場をつくるのが目的です。
※韓国では、毎年「新春文芸」と冠し、各新聞社が新作を募集し、元旦に小説、詩歌、児童文学、戯曲の大賞が各社から発表されます。さらに戯曲は受賞作品が同年の秋に著名な演出家の演出で上演され、劇作家への登竜門として人気が高く、毎年二千を越える応募があります。今日、韓国で活躍する劇作家のほとんどは、この「新春文芸」受賞者です。
今回は、その初日に、昔からHANAと親交の深い金世一さんが演出した作品を見るために劇場を訪ねました。
金世一さんが演出したのは「秋雨/가을비」という作品です。
作品紹介より
「秋雨/가을비」
美しい舞台に広がる悲しい物語一家の父親は童謡の作曲家で彼の歌は有名な童謡大会で賞を取ったこともあった。しかし、一家は経済危機で離散。娘は、家出をした少年が引いてきた客を相手に、妻も老人を相手に栄養ドリンクと共に体を売っている。場末のホテルで起こった連続殺人事件をめぐる、数奇な家族の物語。Miryang International Performing Arts Festival 2012 作品賞・演技賞受賞作。(釜山日報 新春文芸戯曲賞ノミネート)
日常の裏側で起きている悲しい事件。そんな事件を、見ないふり、知らないふりをして過ごすことはできる。けれど、風の音に耳を傾けるように、心を寄り添わせてみると、その事件の悲しい主人公たちは、明日の自分かもしれない、と思える。そんな舞台でした。
かなりヘビーな内容ですが、せりふで紡ぐだけでなく、美しくも悲しい人間の心を表すかのような照明、俳優たちの体の動き、「日常」と「事件」の時間軸を巧みに交差させながら、進んでいく構成により、ストンと腑に落ちる作品でした。
韓国語の戯曲を、日本語に翻訳して上演しているわけですが、せりふのひとつひとつが美しく翻訳されていて、それが俳優たちの口を通して生きたせりふとして舞台上で交わされていることにも感動を覚えました。
本・映像など、さまざまな種類の翻訳がありますが、この演劇の翻訳というのはなにかまた違ったコツがありそうで、興味深いです。
同日、めちゃくちゃヘビーな「가을비」の上演後、もう1作品上演がありました。
作品紹介より
「罠/덫」
あなたは、どんどん罠に嵌って行く!閉店時間の近づいたデジタルカメラの販売店。一人の客が入ってきて、昨日ここで買ったカメラの交換を求める。消費者及び善良な市民としての権利を、強引に主張する客と、その酷いわがままに手を焼く販売員。商品の交換をめぐる攻防は、やがて、条理と不条理を行き交いながら混迷を極めていく。ついには、警察官まで呼び出され、客VS販売員と警察官の熾烈な闘いが、際限なくエスカレートしてゆく―この戦いの勝者は誰?(韓国日報 新春文芸戯曲賞受賞)
こちらは、日本人演出家の吉村ゆうさんによる作品で、「가을비」のヘビーさを吹き飛ばすような爽快なコメディー作品。
すごく滑稽で、ツッコミどころ万歳のキャラクターたちが、舞台の上で、走り回り飛び回り、大汗をかきながら、1時間せりふの応酬を続けます。息つく暇もない、終始笑いが止まらない作品でした。あのせりふ量はただただすごい。
性格の異なる二つの作品を同時に観劇でき、今の韓国の演劇に触れることができる贅沢な体験でした。
韓国の演劇作品は、作品の構成や、扱う題材など、どこか韓国映画に通ずるものがあり、韓国映画好きならきっと気に入るだろうと思います。演劇を見る習慣のない方も、ぜひ次の機会があれば、見にいってほしいなと思います!
韓国新人劇作家シリーズ実行委員会が、ツイッターで情報発信しているので要チェックです。
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