前にもちょこっとブログに登場したHANAの守り神、ブタさん。今日はこのブタさんがなぜ守り神なのか、そのエピソードを紹介したいと思います。
現在のHANA事務所の開設は約5年前。2006年6月30日にオープニングパーティを行いました。元同僚や仕事関係など約50人の方々が集まり、HANAの門出を祝ってくださりました。特に元の勤務先や同僚の方々からは、会社を離れていく私に物心両面でさまざまな支援をいただき今でも本当に感謝しています。
韓国では事務所を開いたときや新車を調達したときに、お供え物を準備して「告祀」という儀式を執り行います。その際の必須アイテムは、ブタの頭、ブタはお金持ちの象徴。にこっと笑った福々しい表情のものを準備し、お供え物の中心に据えます。
さて、HANAの事務所開きでも告祀を行うことにしました。韓国に関わる出版社の立ち上げだけに、お客さんに韓国式の文化を体験してもらおうという趣向です。どこでブタの頭を調達できるか…、おっと韓国食品の通販雑誌をみたら売っているではないですか!(しかも2500円) 早速到着日時を確認して注文します。その他にも、シルトク(小豆を載せたお餅)、干し明太、タコ糸、チヂミなど、必要なお供えものを手配しました。
当日、前職場の最後の仕事をお昼に切り上げて、準備のため新事務所へ。昼過ぎから注文の品物が続々届きます。やがて、ブタさんの頭が到着。「うん? やけに重い?」。包みを開けてみるとなんと、かちかちに凍ったブタの「生首」です(通常は中の骨などを取り除いてゆでてあるのですが)。しかも表情が…(あえて具体的な描写を避けます)。これではハレのパーティなのか黒魔術の会なのかわかりません。ともかくなんとかしたいのですが、かちんかちんに凍って手の施しようがない。あとから駆けつけた韓国人の後輩が陽に当てて、目尻を引っ張ったり、口をこじ開けたりといろいろやってくれましたが、全然溶けないし、時間が足りません。
ブタがないことには計画がすべておじゃんです。「어떡하지...(どうする…)」。そのとき不意に頭にひらめいたのが、当時流行っていたドラマ「私の名前はキム・サムスン」。パーティに来る予定の元同僚に急きょお願いし、新大久保の韓流ショップに行って「キム・サムスン」に出てくるブタのぬいぐるみを探してきてもらいました。
午後7時。部屋からあふれるくらいに集まってくれたお客さんが見守るなかで、「キム・サムスンのブタ」は主人公を待っていたお膳の真ん中に据えられました。これでようやく始められます。
韓国人の後輩の司会・進行に従い、まずは私からお供えの酒を注ぎ、クンジョル(最も丁寧なお辞儀)を捧げて会社の成功を祈願します。お祈りの際にはお札をブタの口や耳に差し込むことになっていますが、ささらないため、ぬいぐるみの下のトレイに。次いで、お客さんの多くも同じようにHANAの成功祈願をしてくださいました。それにしても、神妙な顔でぬいぐるみに向かってクンジョルする私やお客さんたちを見て、韓国人の司会者、お客さんは何を思ったことやら…。いまでも残念なのは写真が残っていないことです。ともかく、告祀はなんとか無事に終わり、夜遅くまでパーティーは楽しく続きました。
こうしてHANAの歴史は始まりました。振り返ると、いつでも「괜찮아! 何とかなるよ!」の楽観主義でやってきたHANAの幕開けにふさわしいハプニングだったかもしれません。この日以来、このブタさんはHANAの守り神として私達を見守ってくれています。
まだまだ成功にはほど遠いですが、いつか必ずみんなの支援に報いたいと思います。