※このコーナーは、『韓国語ジャーナル hana』の定期購読者に送付されている会報誌『hana通信』の「わっしーのマニアック韓国語」を再編集したものです。
ネイティブの話す韓国語は教科書に書かれている韓国語と少し違っている、ということにお気付きの方は多いのではないかと思います。教科書によっては、口語形などの用語でその形を挙げているものもありますね。
今回は、規範的な韓国語からは外れているけれども、実際に使われるという例を幾つか挙げてみようと思います。
よく知られている例で、-(으)려고という語尾が、口語で-(으)ㄹ려고という形になるというものがあります。例えば、가려고が갈려고になったり、먹으려고が먹을려고になったりします。
ネイティブの会話ではかなりの頻度で使用される形です。標準語では採用されておらず、間違いとされますが、知っておいて損はありません。
ここで興味深いのは、この語尾がㄹ語幹の用言に付く場合です。ㄹ語幹に-(으)려고を付けるときはそのまま語幹に付ければよいので、알다であれば알려고、만들다であれば만들려고となります。
ところが、ここでㄹ려고という音が出てくると-(으)ㄹ려고の形に見えてしまい、ネイティブがこれを間違いだと勘違いしてしまうことがあります。알려고や만들려고はれっきとした標準語の形なのですが、勘違いした結果、아려고や만드려고という形になって使われることがあります。
口語でㄹが加わる例として、他に모자라다という動詞の例があります。모자라다は母音語幹の正則用言で、活用するときは모자라고、모자라면、모자라서のように活用するのが標準です。
しかし口語では-아/어の形にㄹが加わって모잘라という形になり、모잘라서や모잘라요という形で使われることがよくあります。するとㄹ라という部分から間違った類推が働き、르変則用言だという認識が生まれます。
そして最終的に、모자르다というそれまでなかった新しい動詞が誕生するということが起きます。この動詞は辞書に載っていませんが、모자르다が辞書形だと思っているネイティブは多いです。
ㄹに関連して、もう一つ例を挙げましょう。語幹がㅀで終わる用言についてです。動詞では닳다や끓다など、形容詞では싫다や옳다などがありますが、全て子音語幹の正則用言です。
従って、例えば-(으)면という語尾を付けたときには、닳으면や싫으면となるのが正しい形です。ところが、このうち動詞である닳다や끓다は、口語では으を間に入れずに닳면、끓면のように活用することがあります。
発音は[달면]や[끌면]となりますので、ㄹ語幹と同じような活用をしていることになります。この活用はソウルなど首都近辺でよく見られ、逆に慶尚道など南部の方言の話者は使わない傾向があります。
他の앓다や뚫다などの動詞にもこの現象は見られますが、逆に形容詞については싫면や옳면という形は見られず、常に싫으면、옳으면となります。
このように、ネイティブが使う形には教科書通りでないものがよく出てきます。今回は用言の活用に注目しましたが、他にもさまざまなものがあります。少し意識しながら耳を傾けてみると、新たな発見があるかもしれません。
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