※このコーナーは、『韓国語ジャーナル hana』の定期購読者に送付されている会報誌『hana通信』の「わっしーのマニアック韓国語」を再編集したものです。

【マニアック韓国語 Vol.5】쓰다の話

今回のマニアック韓国語は、쓰다という動詞についての話です。

皆さんはこの쓰다という動詞、もちろんご存じですよね。たくさんの意味がある単語ですが、一番よく使うのは「使う」と「書く」でしょう。では、他にどんな意味があったでしょうか?

「使う」「書く」と並んで重要な쓰다の意味が、「かぶる」です。これら3種類の意味は、語源的に見るとそれぞれ別の起源を持っています。そして、쓰다の意味のほとんどは、三つ目の「かぶる」から発展していると考えると理解しやすくなります。

日本語の「かぶる」に該当する쓰다の用法にはどのようなものがあるでしょうか。모자를 쓰다(帽子をかぶる)が典型的ですね。薄い布状のものを頭の上から載せるイメージです。

このイメージを応用すると、마스크를 쓰다(マスクをする)、가면을 쓰다(仮面を付ける)などに発展させることができます。

上からかぶるか、前からかぶるかという方向の違いはありますが、薄い形状のものを頭部に密着させるという点で、帽子と共通しています。パーカーのフードや強盗の使う目出し帽などをかぶるときなどにも、쓰다が使えます。

また、布状のものでなくても、顔に何かをかぶせて見た目を変える場合は쓰다が使えます。典型的なものは안경을 쓰다(眼鏡をかける)ですね。가발을 쓰다(かつらをかぶる)などもあります。ただし、ある程度面積が大きくないといけないので、例えば付けひげなどには쓰다は使えません。

上に載せるという意味では、우산을 쓰다(傘を差す)もあります。この場合は、開いた傘を頭の上にかぶるイメージです。

他の人を傘に入れてあげる場合は、씌우다(かぶせる)を使い、우산을 씌워 줄게(傘をかぶせてあげるよ=傘に入れてあげるよ)と表現します。

この他、먼지를 쓰다(ほこりをかぶる)のように、頭の上から体全体に浴びるという意味もあります。この意味のときは、뒤집다と쓰다がくっついた뒤집어쓰다(かぶる)という形で이불을 뒤집어쓰다(布団をかぶる)、물을 뒤집어쓰다(水をかぶる)のようにも使われます。

この「体全体に浴びる」の意味が派生すると、比喩として죄를 뒤집어쓰다(罪をかぶる)や누명을 쓰다(ぬれぎぬを着せられる)などのようにも使われます。누명을 쓰다は、訳すときは「ぬれぎぬを着る」ではなく「着せられる」と受身にすると自然になります。ぬれぎぬは、ほこりや水と違って、かぶせる人間が他にいるのが普通だからです。

なお、これらの쓰다を씌우다にして、죄를 뒤집어씌우다(罪をかぶせる)、누명을 씌우다(ぬれぎぬを着せる)にすると、他の人に罪やぬれぎぬをなすり付けるという意味になります。

このように、一見多様な意味があるように見える쓰다も、実はそのほとんどが「かぶる」から発展した意味だと言うことができるのです。

いかがですか?ばらばらだった쓰다が、一つにつながって見えてきませんか?