韓国人は、猫を「霊物」といいます。とても利口で、まるで霊魂がこもっているかのような動きをするからです。しかし道端に住む猫たちは「泥棒猫」と呼ばれ、嫌われたりもします。道を闊歩し、ゆったりと座りながらこっくりこっくりと居眠りをする東京のネコたちとは違い、韓国の野良猫たちは人々を避け、顔色を見ながらやっとの思いで生活しています。食べるものを探すことも難しいので、大部分はげっそりやせた体型をしているのです。
それをかわいそうに思った人が食べ物を与えようとすると、大人たちは厳しく叱ります。「野良猫がどんどん増える」という理由からです。また、発情期の猫がニャーニャーと泣いている声がまるで小さな子供が泣いている声と似ていて、気分が悪いという人もいます。上下関係を区別できないネコの傲慢さも、韓国人がネコを嫌う理由のひとつです。
「トムとジェリー」というアメリカのアニメを知っていますか?長い年月が経った今でも人気のある、トムというおとぼけ猫とネズミのジェリーの物語です。トムは、ジェリーを追いかけて結局はいつもジェリーにこらしめられます。トム、すなわち猫は、長い間「悪役」だったというわけです。それが当たり前のことだと受け入れてきました。
しかし、韓国の人たちは最近だんだんと変わり始めています。猫の傲慢さに隠れた愛くるしさが分かるようになってきたのです。猫たちの気持ちを認めてあげようとし、また、猫の強い母性に心を開くようになりました。「愛猫家」であることを自負している人を周囲で見かけることも多くなり、ポータルサイトでは猫とのエピソードを写真と一緒に載せるコーナーが人気です。
こういった変化には、動物に関したテレビ番組やネット上の動画なども一因になっているようです。「TV動物農場」という番組で、人間とともに生きていく動物たちのおもしろい話が評判を呼び、動物を大事にする人々の心、傷付いたときに動物からもらう癒しなどを取り扱ううちに、動物に対しての気持ちが変わった面があります。
一方で、飼い主に虐待を受ける動物を見て、人間の残忍性に怒りを感じ、動物虐待に対して厳しい処罰をようする世論を作ったりもしています。
このような韓国での変化に、いつの日か、韓国でも「猫の恩返し」のような映画を作るのではないかという期待も膨らみます。
猫の王子様「ロン」に心ときめいた頃の記憶に浸りながら、今日は何だか少し、幸せです。